電源喪失の原因は津波か?浸水か?

映画を観たので、9年前のことを少し思い出しました。「SB0」という単語が使われていましたが、これは英語で station black out ということで、全電源喪失を意味します。つまり、補助電源 までも失われるということで、ありえないことが起きたことを意
味します。しかし、単語があるということは、想定される事態ではあったと言えます。

SBOの原因は、補助電源が地下に置いてあり、津波による浸水で動かなくなったことです。なぜ地下に置いてあったかというと、防潮堤が津波を防いでくれると信じていたからでしょう。しかし、それは甘かったと言わざるを得ません。地下にあるということは
津波でなくても、洪水でも電源喪失が起きることを意味します。武蔵小杉のタワーマンションと同じであることは肝に銘ずべきです。

それにしても、地震から津波来襲まで50分あったという記事を見つけました。映画ではすぐに津波が来たことになっていますが、50分というのはかなり長い時間です。その間、原発が無事に停止したので、職員はみな安心していたのでしょうが、巨大津波の警報は所長に届いていたはずです。それにもかかわらず、職員2名をタービン建屋に向かわせています。彼らはそこで津波に呑まれて殉職しています。福島原発で死亡したのはこのふたりだけです。「・・・だけ」とは言うものの、ふたりもいたことは重大なことではないでしょうか。映画では、ふたりの職員が津波に呑まれる映像が映っていましたが、説明はなにもありませんでした。ふたりの犠牲がなんら評価されず、覚えられてもいないことは悲しいことです。

巨大津波の警報がいつ所長に届けられ、どういう対策がとられたのかが映画では何ら取り上げられていませんでしたが、このあたりに反省点があるのではないでしょうか。

 映画とは別の話題ですが、2000年ごろ、私は女川原発を訪れたことがありました。そこで観光用ですが、原発の安全性を説いたビデオを見ました。曰く、「事故が起きても、自動的に制御棒が挿入されて、原発は自動停止するので安全である」とのことでした。私はその説明にひどく納得して、その場を去りました。しかし、今考えると、あの説明は何だったのでしょうか。国民を騙すためのビデオだったのか? それとも担当者もそう思っていたのか? そのビデオを作った人を逮捕せよとは言いませんが、少なくとも公に謝罪してもらいたいと思います。