「誰が太平洋戦争を始めたか」を読む

先日、別宮暖朗著「誰が太平洋戦争を始めたか」を読みました。

別宮さんのことは何も知らなかったのですが、テーマに関心があったので、図書館で借りて読みました。なるほどというところもあり、面白く読ませていただきました。ただ、最後の結論部分にある「ルーズベルトの陰謀説は間違い」という論説には引っかかりました。私は陰謀説で納得しているし、その方向の本を読んできているので、別の考えを堂々と述べていることに、違和感を感じるとともに、「異説を唱える勇気を持つ人は立派」と思いました。

真理を把握するためには、正反両方の意見を並べて検討しなければなりません。しかし、時代の空気などがあると、一方の意見しか流れてこないことがあります。やはり、誰かが異説を唱えなければならないのです。しかも、ただ唱えるだけでなく、根拠を示して議論しなければなりません。この本における別宮さんの論法は、やや不充分との印象を受けましたが、福留繁(当時の連合艦隊参謀長)の意見を引用するなど、根拠をひとつ提示しているので、とても貴重だと思いました。

ビアドに対する批判は「引用の仕方が恣意的」というだけですから、ものたりなさを感じました。

私としての結論は、別宮さんの指摘があったにもかかわらず、あいかわらず「ルーズベルトの陰謀」説を支持していますが、だからと言って、それが絶対に正しいと固執するつもりはありません。別の説も提出していただいて、議論を深めることが歴史理解には是非とも必要であると考えます。大切なことは議論の根拠を積み上げてゆくことです。

日本の真珠湾攻撃で一番喜んだのはチャーチルです。これは「さもありなん」というところです。当時、イギリスはドイツのロケット攻撃に苦しんでいて、アメリカの参戦を強く願っていました。ところが、アメリカ世論が戦争に消極的で、参戦したいルーズベルトは困っていました。日本の真珠湾攻撃で大手を振って参戦できることになったのですから、チャーチルが喜ぶのも当然です。

日本政府の愚かさは、相手の喜ぶことをしてあげたということなのです。情報不足、判断ミス、この体質が今も変わっていないのは恐ろしいことです。政府だけではありません。マスコミ、学者たち、すべての国民が大いに反省しなければなりません。