GDPと経済成長の関係は。

経済学を専門にしてないので初歩的なことがわからないのですが、GDPの分析と景気の実感が乖離しているので、どうもおかしいと思い、さらに調べてみました。すると、日本のバブル崩壊直後もGDPが増加していることがわかりました。ドルベースでも円ベースでも同じです。これはどういうことでしょうか。GDPを基準に判断するのは間違いなのでしょうか。ややGDPという統計の取り方に疑問を感じ始めています。

 

そこで別の経済指標グラフも漁ってみたところ、経済成長率という項目を見つけました。このグラフはバブル崩壊後やリーマンショック後に落ち込んでいて景気の実感と合致しています。経済成長率とはどういうものなのでしょうか?それは読んで字のごとく、GDPの前年度比率のことで、やはりGDPを基準に計算します。バブル後でもGDPが増加しているのは経済成長率がプラス部分で低下しているのでGDP全体としては伸びていることになるというわけです。しかし、土地の値段が暴落し、銀行が破綻寸前まで追いこまれ、銀行利子が0%近くまで下落したにもかかわらずGDPとしてはわずかながら増加ということがあり得るでしょうか?どうも腑に落ちません。

 

「人口増加がGDPを押し上げる」という説明を聞いたことがあるので調べてみると、たしかにアメリカや中国は人口増加していてGDPは増えています。ヨーロッパ、日本は人口増加が少なく、大雑把に見るとGDPはそれに連動しているように見えます。しかし、1995年以降、日本のGDPはほとんど増加しなくなったのに対し、人口は2010年までは増加しているのですから、細部においては連動しているわけではありません。

日本の一人当たりのGDPの推移 - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

そこでひとり当たりのGDPのグラフを見てみることにします。これは円で計算するか、ドルで計算するかで形が変わり、どう評価してよいかわからなくなります。また、アメリカの優位性も消えてしまいます。と言っても、2020年は世界5位につけています。日本は23位ですから、ヨーロッパ諸国の下位、フランスよりひとつ上の位置です。2000年には日本が2位だったのですから、日本の凋落ぶりはかなり激しいものがあります。しかし、だからと言って日本人の生活が悪くなったわけではないので、この統計もどれだけ信用してよいのか疑問です。

 

実感をたよりにするのは個人差が大きすぎるので良くないのですが、為替変動、物価変動などの流動的要素をすべて兼ね備えた統計などはほとんど不可能ですから、ある程度実感も踏まえるということは許されるのではないでしょうか。私の実感をたよりに分析すると、かつての日本経済の柱であって造船、鉄鋼などはすでに国際競争に敗れ、花形であった家電製品も衰退しています。それに代わる産業もなく、残ったのは車産業のみとなっています。個々の企業の中には世界に通用するものがいくつもありますが、産業としては全体的に凋落傾向にあると言わざるを得ません。このような日本を立て直すには何をすべきか・・・、これがいま問われていると言えます。

 

これに対する回答はすでに多くの人からなされていて、多種多様な提案がなされています。それらの意見を踏まえて政府が経済政策を実行しているわけですが、従来の政府の政策は「景気回復」というスローガンのもとにやや内向きな姿勢に終始してきたのではないでしょうか。非自民政権のときは「財政再建」や「賃金上昇」も踏まえられた政策になっていたのかもしれませんが、どちらにせよ内向きの発想です。安倍政権になり「経済成長」という表現も使われるようになったことは評価できます。しかし、結果としてGDP成長が見られないのですから、政策変更の時期にきていることは間違いありません。

 

私の立場からすると、国民意識の変革から始めなければならないと考えています。標語として「科学技術立国」をもう一度掲げて、科学技術教育の拡充を図ることが必要です。幅広い人材を養成して、自分ひとりの生活安定を望むのではなく、国家社会の発展のために何ができるのかという観点を持つ国民を増やすことです。「他人に迷惑をかけないように」というモラルのレベルを脱皮して、「他人のためになることをする」というもう一段高いモラルレベルを目指さなければなりません。「国が悪い」とか、「国になんとかしてくれ」という「おかみ意識」ではなく、まず自分たちでなんとかしようという自立的国民を育てなければなりません。そうすれば政府の政策が人気取り的なバラマキではなく、実質的に国を成長させる政策をとれるようになるはずです。政府ではなく、まずは国民の意識改革であるという結論です。